自社開発のメールシステムが抱えていたセキュリティ対策と働き方の課題
BIGLOBE社内のITを担当するITサービス部では、2017年の大きなテーマとしてメールシステムの更改に取り組んできました。その経緯について事業管理本部長代理でITサービス部長兼務の池澤聖司氏は、次のように振り返ります。
「従来は独自のメールサービスを構築していました。そのため、誤送信防止のような新しい機能を追加しようとすると、開発コストが発生するため古いシステムをそのまま利用していました。それでも、メールのセキュリティ対策を強化するために、添付ファイルの暗号化は現場への教育や啓蒙活動を通して、各自が責任をもって作業するように促してきました」
独自のメールシステムは、メールとしての機能を中心に開発されており、カレンダーなど他のサービスを利用する社員が少ないことも課題となっていました。その点について事業管理本部 ITサービス部の高岡健マネージャーは、以下のように切り出します。
「オンプレミスの社内システムでカレンダーの使い勝手があまりよくなかったので、全員がメールやカレンダーに予定を入力して共有するまで使い込まれていませんでした。スマートフォンが普及したこともあり、外部のクラウドサービスやSNSを使って情報を交換する社員もいました。こうした状況は、セキュリティやコンプライアンスの面からも、大きな課題となっていました」
さらにイントラネット内での利用を前提に開発されたメールシステムは、社員の働き方にも影響を与えていました。同じくITサービス部で働き方の改革に取り組んでいる高橋啓明主任は、その課題について以下のように話します。
「当社では社員と派遣と業務委託など、多くのスタッフが働いています。それぞれの働き方に合ったITインフラを提供することが、ITサービス部にも求められていました」
ビッグローブ株式会社
事業管理本部長代理
池澤 聖司氏
Gmailで添付ファイルの暗号化を自動化するためにActive! gate SSを採用
ITサービス部では、メールシステムの更改において複数の大手ITベンダーにRFP(要件定義書)を提出し、自社の目的に合った提案を求めました。高岡氏は「RFPの作成においては、働き方改革に貢献できるメールシステムであることに加えて、添付ファイルを自動的に暗号化する機能も必須の条件にしました。その他にも、社内で利用しているIDやパスワードとの連携や、スマートフォンなどのモバイルデバイスの利活用も要件に入っていました」とRFPの内容に触れます。
同社には、ITリテラシーの高いスタッフが働いているので、メールの添付ファイルを各自が暗号化する、という作業は社内で徹底されていました。それでも、業務の現場からは暗号化の作業を軽減できないか、という要望もありました。加えて、社内のメールシステム以外では、ファイルの暗号化などをチェックできない心配もありました。そのため、メールシステムの更改においては、各種のモバイルデバイスからの利用も可能なクラウドサービスで、添付ファイルの暗号化が必須の条件となりました。さらに高岡氏はもう一つ重要なポイントとして「メールのアーカイブも要件に入れました。オンプレミスのメールシステムのときには、アーカイブが大きな課題となっていたので、我々の負担を軽減し、なおかつ安全で確実にアーカイブする機能も重視したのです」と付け加えます。
こうした要件に応えるために、数社のITベンダーから提出されたメールシステムの内容を比較検討して、ITサービス部ではGmailとActive! gate SSにActive! vault SSを組み合わせたソリューションを選択しました。その理由について高岡氏は「最終的には、Gmailの販売実績も高く我々が求めていたID連携などを提供できるツールも充実していたG Suiteリセラーによる提案を選びました。また、コストパフォーマンスの面で他社の提案よりもActive! gate SSとActive! vault SSが優れていたのも、選定の決め手となりました」と話します。
ビッグローブ株式会社
事業管理本部 ITサービス部
マネージャー
高岡 健氏
1ヶ月の並行運用をバックグラウンドで行い円滑な移行を実現
GmailによるActive! gate SSとActive! vault SSの導入を決定したITサービス部では、本番稼動に向けて準備を開始しました。その方法は、2017年8月のカットオーバーの1ヶ月前から、バックグラウンドで新メールシステムを運用する並行作業でした。その狙いについて高岡氏は「過去に大規模なメールシステムの切り替えを経験したときに、いきなり変えてしまうと過去に受信したメールが読めなくなってしまい、現場で戸惑う人がいました。今回はそうした現場の混乱を防ぐために、1ヶ月ほど前から並行してメールを受信しておいた方が、スムーズに移行できると考えたのです。また、1ヶ月の準備期間があれば、その間にGmailで受信したメールをチェックして、必要なメールがフィルタリングされていないかも調べられるので、業務の混乱も防げると思いました」と説明します。
1ヶ月の並行運用という工夫が功を奏して、BIGLOBE全社でのメールシステムの更改は、大きなトラブルも発生することなく、円滑な切り替えを実現しました。そしてカットオーバーの段階から、Active! gate SSによる添付ファイルの暗号化もスタートしました。
ビッグローブ株式会社
事業管理本部 ITサービス部
主任
高橋 啓明氏
現場の運用に合わせた柔軟なカスタマイズがActive! gate SSの導入メリット
GmailとActive! gate SSによる誤送信防止がスタートしてから数ヶ月が経過して、ITサービス部には業務の現場からいくつかの要望が寄せられるようになりました。その一つが暗号化した添付ファイルのパスワードに関する要望でした。具体的な内容について池澤氏は「送信先で利用するパスワードを共通化したいという要望でした。各自がファイルをZIP方式に圧縮してパスワードを設定していたときには、送り先の運用負担を軽減するために、月ごとに共通のパスワードを決めて運用していたのです。しかし、Active! gate SSの標準的な設定では、安全のためにパスワードは毎回ランダムに生成します。そのため、共通パスワードで運用していた送り先にとっては、統一したいという要望が出ていました」と話します。
ITサービス部では、RFPを作成したときに添付ファイルの暗号化は必須の要件としていましたが、パスワードの運用については定義していませんでした。高岡氏は「現場からのフィードバックをもらって、Active! gate SSの機能を調べたところ、パスワードの運用を柔軟にカスタマイズできると知って安心しました。変更もウェブの画面から容易に設定できるので、便利だと思います。運用を開始してから、メールを受信されるお客様によっては、ウェブからのダウンロードを社内ルールで禁止しているなど、各社の運用ルールも異なっていました。そうした個々の問題にも、Active! gate SSならば個別に柔軟に送信や添付のルールを調整できるので、とても助かっています」と評価します。
IT業務の負担を大幅に低減したActive! vault SSのアーカイブ
メールシステムの更改において、アーカイブは必須の条件となっていました。その理由について高岡氏は「自社でメールシステムを運用していた当時から、メールのアーカイブは重要な課題でした。バックアップという目的だけではなく、コンプライアンスの強化という面からも、保存されたメールには監査証跡としての役割もあります。しかし、すべてのメールを社内の限られたITスタッフだけでアーカイブの運用をするのは、業務にとって大きな負担となります」と説明します。そこで、ITサービス部ではActive! vault SSに注目しました。Active! vault SSは、1年・3年・5年と保存期間を選ぶことができる上、アーカイブされたデータを記憶メディアに移して送付するサービスも用意されています。
高岡氏は「Active! vault SSのコストパフォーマンスも魅力でしたが、やはり運用負担を大幅に低減してくれるサービスの内容を評価しました。Active! vault SSのアーカイブによって、以前に比べて本来の業務に注力できる余裕ができました」と評価します。
さらにITサービス部では、Active! vault SSにアーカイブされたメールを分析して、パスワード運用の現状を把握して、今後のルール改善にもつなげていく考えです。
Active! gate SSの機能を活用して働き方改革もサポートしていきたい
ITサービス部で働き方改革に取り組んでいる高橋氏は「今回のGmailとActive! gate SSにより、社員が柔軟に働けるメールのインフラが構築できたと思います。この情報共有のインフラを活かすために、ネットワークなどの通信インフラも見直していく計画です」と話す。
また高岡氏は「当初、Active! gate SSの導入に対する期待は添付ファイルの暗号化だけでした。しかし、機能を調べていくと、さまざまな誤送信防止やメールを活用する機能が備わっているので、今後はそうした機能を調べて、より便利で安全なサービスを社内に提供できればと考えています」と期待を述べます。
そして池澤氏は「メールシステムの更改はゴールではありません。これからがスタートで、現場のいろいろなニーズに応えていくことで、最終的には新システムによる働き方改革を実現し、社員が働きやすい会社へと進化していかなければなりません」と展望を語ります。