東京都のほぼ中心部に位置し、多摩川と浅川の清流に恵まれ、昔から交通の要衝として発展してきた日野市。「新選組のふるさと」としても有名な同市には、約18万7千の市民が暮らし、市政運営を担う日野市役所には、約1,400名の職員が働いています。そして、同市の企画部に所属する情報政策課では、電子自治体の推進をはじめとして、情報システムの施策や調整、電子計算組織の運営、さらには情報セキュリティ対策の管理運営を担っています。同課では、2015年からメールの利便性を向上するためにActive! mailを導入し、2022年にはメール無害化によって無害化される前の原本メールを保管し検索するために、Active! vaultを採用しました。
市民からの信頼を守るために毎月「セキュリティの日」を設けて職員の意識を向上
日野市役所の企画部 情報政策課の坪田充博 課長は、市政運営を担う立場として情報セキュリティ対策をどのように強化していくべきかについて、次のように話します。
「行政機関のセキュリティ対策は、市民からの信頼にきちんと応えていかなければなりません。その信頼とは、事故がないことが第一だと思っています。我々の部署では、市庁舎で働くすべての職員がセキュリティ対策を意識する必要性があると考え、毎月第四火曜日を『セキュリティの日』にし、メールなどを配信して定期的な注意喚起を行っています。」
同じく情報政策課で庁内のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組んでいる副主幹(情報戦略担当)の五十嵐裕一氏は、庁舎内におけるActive! mailの利用について説明します。
「こちらの課へ異動になる前は、税務部門にいました。その当時は、主に業務でActive! mailを利用していました。庁舎内は、自治体の情報システム強靭化対策により、インターネット接続系とLGWAN接続系が分離されていて、Active! mailはLGWAN内で利用していました。当庁舎では、外部から受信するメールアドレスは、個人ではなく各課ごとに代表のアドレスが割り当てられています。そのため、複数の職員が代表のメールアドレスを閲覧するので、特定の端末に依存しないで利用できるWebメールは重宝していました。」
日野市
企画部 情報政策課
副主幹(情報戦略担当)
五十嵐氏
Active! mailの運用実績とサポート力を評価して原本メールのアーカイブにActive! vaultを採用
情報政策課で庁舎内の情報システムの施策や情報セキュリティ対策の管理運営を担ってきた牛迫 広介主事は、Active! mailに続いてActive! vaultを採用した背景を次のように振り返ります。
「自治体の情報システム強靭化対策では、インターネット接続系に配置されているメールサーバーに届いたメールは、すべて無害化処理を行います。その処理によって、無害化されたメールだけが、庁舎内の職員が利用するメールサーバーに転送されます。そして、Active! mailは無害化されたメールのみを閲覧できるように整備してきました。しかし、職員によっては、無害化されたメールだけでは担当する業務を遂行できない、という課題がありました。それは、無害化処理によって排除されてしまう添付ファイルに起因していました。」
メール無害化処理では、LGWAN内で職員が開くメールの安全性を確保するために、添付ファイルにマクロなどが登録されていると、すべて取り除かれます。また、動画や拡張子が不明な添付ファイルも、基本的には無害化処理の対象となります。牛迫氏は「無害化によって、高度なセキュリティ対策は維持できるのですが、排除されたマクロ付きのワークシートやドキュメントの中には、職員が業務で必要とするものが含まれていることがあります。例えば、関係省庁から送られてくるマクロが設定された調査用のドキュメントや、土木建築などに関連するCADデータなどは、無害化の対象となってしまいます。こうした添付ファイルを必要とする職員に届けるためには、無害化される前のメールを完全な形で保管すると同時に、必要に応じて的確に検索できるように整備する必要がありました。そこで注目したのが、Active! vaultによるメールのアーカイブでした」と説明します。
自治体によっては、原本保存用のメールサーバーに対して職員からのアクセスを許可しているケースもあります。しかし、日野市役所の情報政策課ではセキュリティ対策を重視して、原本保存用のメールサーバーへのアクセスは制限しています。そして、職員からの要求に対して、情報政策課で個別に対応する体制を整えてきました。アーカイブを行わなくても別途メールサーバを用意し、転送することでメールの原本は保存できます。しかし、メールサーバーからメールを検索するのには、熟練されたエンジニアでも手間と時間がかかります。牛迫氏は「Active! vaultで無害化される前のメールをすべてアーカイブしておけば、職員からメールの原本を求められたときにも、迅速に対応できると考えました」と話します。坪田氏は「重要なメールの原本をアーカイブするには、信頼できるソフトを採用するべきだと思いました。そこで、Active! mailの運用実績があり、サポート対応などでも安心できるクオリティアのActive! vaultを選びました」と選定の理由に触れます。
日野市
企画部 情報政策課 主事
牛迫氏
Active! vaultで無害化される前のメールを保管し検索性を向上
Active! vaultの導入においては、一定のトライアル期間が設けられました。牛迫氏は「Active! vaultで検証した主な機能は、アーカイブされたメールの検索性能でした。送信先や送信元での検索はもちろん、日時による絞り込みなど、職員が必要とするメールの原本をどれだけ短時間に的確に探し出せるかを検証しました。その結果、十分に満足できる性能だと判断して、正式な導入に至りました」と経緯に触れ、「導入後は、Active! vaultにアーカイブされたメールを原本として扱うようにしました。その結果、運用管理も簡素化され、職員から要求が来たメールの検索性も向上しました」と成果を語ります。坪田氏も「Active! vaultによるメールの原本保存は、メールサーバーに頼る運用よりも、より信頼できる保管が可能になったと思います」と評します。
自治体情報セキュリティ対策の見直しを見据えてさらなる安全性を推進
今後に向けた取り組みについて、牛迫氏は「自治体情報セキュリティ対策の見直しを検討していかなければなりません。その中で、メールの無害化という現在のセキュリティ対策も変わっていくかもしれません。それでも、メールの原本を保存するというアーカイブの必要性は変わらないと思います。その意味では、今後もActive! vaultを使い続けていけたらと考えています」と展望を語ります。また、五十嵐氏も「情報政策課には、専門的な知識や技能を有した職員が、長く勤務しています。他の部署から異動してくるケースは、それほど多くないのですが、税務課などで庁舎内の業務を長く経験してきた自分の知見を活かして、専門的な知識を持つ職員と業務のニーズを橋渡しすることで、日野市役所のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献していきたいと考えています」と話します。