シンクライアント環境ではクライアント型メールソフトの利用に
課題があった
和歌山県庁の企画政策局にある情報政策課では、限られた人数で県職員のIT利活用を効率よく運用管理していくために、2004年からシンクライアント環境を構築してきました。その取り組みと課題について、ネットワーク班の田村成準班長は、次のように振り返ります。 「庁舎内には、さまざまなPCが混在していましたが、シンクライアント環境を推進することで、ネットワーク班の運用負荷が軽減できると考えていました。ところが、メールだけはシンクライアント環境に完全には対応していないクライアント型メールソフトであるThunderbirdを利用していたので、その運用に問題を抱えることになったのです」
ネットワーク班が直面したThunderbirdをメールクライアントとして利用していることによる問題とは、ローカル環境で利用する個人用ファイルの管理でした。Thunderbirdはクライアント型メールソフトなので、クライアントとして利用するPCのハードディスクにメールを管理するフォルダーを作成します。
ところが、同県庁のシンクライアント環境では、ファイルサーバー側に容量を制限した仮想ディスクを用意していたので、メールを大量にやり取りする部署や個人のフォルダーが、短期間で溢れてしまったのです。その問題の深刻さについて、同じネットワーク班の大美厚之副主査は、次のように説明します。
「仮想ディスク上の個人用フォルダーの容量の割り当ては一律と決めているので、個別に容量を増やすような運用は行なっていませんでした。そのため、ひとたび個人用フォルダーの容量がメールデータによって溢れてしまうと、その復旧には手間と時間がかかっていました。平均すると、一日に2~3件のThunderbirdの障害に対する問い合わせがあり、解決に30~40分ほどを要していました。それはネットワーク班の業務にとっては、かなりの負担となっていました」
和歌山県庁
企画部 企画政策局
情報政策課 ネットワーク班 班長
竹藤 潔氏
和歌山県庁
企画部 企画政策局
情報政策課 ネットワーク班 副主査
大美 厚之氏
操作性や機能の豊富さに加えて管理機能などを総合的に評価して
Active! mailを採用
情報政策課のネットワーク班では、メールシステムの総合的な運用負担を軽減し、シンクライアント環境に適合しない機能の問題などを解決するために、Webメールシステムへの切り替えを検討しはじめました。
「クライアント型メールソフトの問題に加えて、県庁の職員は3種類のメールアカウントを使い分けるという、利用面での課題も抱えていました。3種類とは、県庁の職員同士で利用するクローズドなメールアカウントと、外部とのやり取りに利用しているLGドメインのメールアカウントに、各部署の代表アドレスとして外部からの問い合わせなどを受信しているメールアカウントです。これらのメールアカウントを使い分けることも、クライアント型メールソフトであるThunderbirdでは限界があったのです。そのため、抜本的に問題を解決するためには、Webメールシステムの導入しかないと考えるに至ったのです」と田村氏はActive! mailの導入検討をはじめた背景を話します。
実際の採用にあたっては、複数のWebメールを検証して、Thunderbirdの利用に慣れていた職員が混乱することなく乗り換えられる操作性や機能を調べたといいます。 「できるだけ使う人たちに戸惑いがないように移行したかったので、Thunderbirdに近い操作感を重視しました。またWebメール製品に装備されている機能にも注目しました。
たとえば、県庁内で利用しているポータルサイトにメールの情報を表示できるAPI機能や、シンクライアント環境で利用しているシングルサインオンサーバーとの連携機能、などが、標準機能として用意されているか、という点も評価しました。なぜなら、独自の機能を追加してしまうと、コストがかかるだけではなく、バージョンアップへの対応も困難になるからです。その結果、標準で搭載されている機能が非常に豊富で、我々の運用に最適なWebメール製品として、Active! mailを導入することにしました」と大美氏は採用の理由について話します。
最小限の機能追加とメールの誤送信を防止するために標準機能を活用
「Active! mailの採用を決めてから、どうしても標準の機能だけでは解決できない点があったので、2つの機能追加を依頼しました。一つは、受信済みのメールのうち、添付ファイルのみを削除できる機能です。メールの本文は残しておきたいと希望する職員が多いのですが、添付ファイルがあると容量を圧迫してしまうので、この問題を解決できる機能を追加しました。もう一つは、ユーザーが設定できるメールの自動転送先をドメイン名で制限する機能です。情報セキュリティの観点から、情報政策課で承認している宛先以外へのメールの転送を抑制する必要がありました」と大美氏は追加を依頼した機能について触れます。
そのほかの機能については、標準で搭載されているものを最大限に活用する方針で、2012年2月から全職員約4,000名によるActive! mailの利用がスタートしました。 「Webメールの切り替えには、当初は混乱が生じるのではないかと考えて、ヘルプデスクも設置して万全の体制で臨みました。ところが、予想に反して限られた問い合わせのみで、平穏無事に入れ替えが完了しました。職員の多くが、Active! mailを利用しはじめてからの、機能や操作に対する理解が極めて早かったのだと思っています」と田村氏は予想よりも容易に全庁に導入できたActive! mailの使い易さやWebメールの効果を高く評価しています。 Webメールシステムに切り替えたことで、クライアント型メールソフトで発生していた個人用フォルダーの管理に関する問題は解決し、職員が複数のメールアカウントを使い分ける際の利便性も大幅に向上しました。さらにActive! mailの標準機能を活用して、メールの誤送信を防止する取り組みも推進しています。
「実はほかの事例から、当庁でもメールの誤送信を防止する取組を推進することになり、対応する製品を導入するべきか検討しました。しかし早急に予算がつくわけではなく、どうしようか悩んでいたときに、Active! mailの標準機能として用意されている、送信前にメールの内容を確認し、外部ドメインの宛先をハイライトして表示する機能を活用できることがわかったのです。その対応も、管理者側で設定を有効にするだけでいいので、とても簡単に対処できました。Thunderbirdを利用していたら、おそらく不可能だったと思います」と大美氏はActive! mailの送信前プレビュー機能の利便性を評価しています。 「今後はActive! mailを利用している職員からの意見や要望をトランスウエアに伝えて、そういった改善要望点をバージョンアップ時に標準機能として反映してもらえるように期待しています。標準機能として、便利な操作や処理が追加されていけば、カスタマイズなどのコストを節約できるだけではなく、バージョンアップへの対応が容易になるので、長くActive! mailを使い続けていけると思います」と田村氏は今後に向けた取り組みについて語りました。
*Thunderbirdは、米国Mozilla Foundationの米国およびそのほかの国における商標または登録商標です。