導入のきっかけと導入前の課題
高崎市は群馬県を代表する都市として、平成18年1月23日に、倉渕村、箕郷町、群馬町、新町、10月1日には榛名町と合併した。新生高崎市の人口は34万人を超え、現在は特例市から中核市への移行を推進している。
同市の市長公室 情報政策課では、合併にあわせて全職員に電子メールのアドレスを割り当て、Active! mailによる利用環境を整えた。その経緯と導入の理由について、同課の情報化担当に話を聞いた。
Active! mailによる全職員の電子メール利用環境を整備する以前、高崎市の情報政策課では、セキュリティに対する配慮からインターネットによる外部との接続を厳密に制限していた。
イントラネットとは切り離した外部と接続して電子メールをやり取りできるPCを1課に1台のみ配備して、不正アクセスや情報漏えいなどが起きないように、細心の注意を払ってきた。
時には、利便性を欠くことがあっても、大切な情報を取り扱う行政という立場から、セキュリティを重視したシステム運用を最優先にしていた。
「各課に電子メールの担当者がいて、その者がインターネットに接続している端末を使って、各課に1つの組織用メールアドレスを使って外部とのやり取りをしていました。しかし、平成18年の合併を機会に、組織用メールに加えて全職員が個人メールアドレスでも電子メールを使えるようにする計画が、平成17年の秋からスタートしたのです。」
これまで、インターネットや電子メール専用ソフトの操作に慣れた職員を中心として、情報漏えいなどに配慮した運用を心がけてきた情報政策課では、全職員への利用を実施するにあたって、2つの大きな課題に直面した。1つは、セキュリティに対する備え。そしてもう1つが、全職員が利用できる電子メール利用環境の整備だった。
「職員の中には、PCの操作に精通している者とそうではない者がいます。そうした違いがある中で、全職員が確実に電子メールを使えるようにするためには、Webメールであることが必須だと考えたのです。もちろんセキュリティの面からも、メールサーバーからWebアプリケーション サーバーまでを集中的に管理できるWebメール環境は、クライアント/サーバー型に比べて、安全性が高いと考えました。また、一般に使われているメールソフトでは、イントラネットの端末すべてにメールの設定をしなければなりません。それに対して、WebメールであるActive! mailではその必要がないので、サーバーで一括管理できる点でも、とても助かりました。『約3,500台の端末を誰が設定するの!?』という問題を簡単にクリアできたのです。」
高崎経済大学のメールシステム構築を参考にActive! mailに決める
「Webメールの選択にあたっては、ユーザー数が多くても安定して稼動することが条件でした。そこで、すでに前年度にWebメールの導入実績がある高崎経済大学に話を聞きました。
高崎経済大学は、同じ高崎市の施設なので、事務方の連携で常時情報交換しています。構築関係もお互いに参考にし合っていました。そうした関係から、同大学が使っているのはActive! mailであること、システムが安定していることや、使いやすいという評判を聞き、これでいけると判断しました」
情報政策課では、WebメールにActive! mailを採用することを前提として、入札を実施した。入札されたシステムは、sendmailをメールサーバーにして、メール用WebサーバーにActive! mailを採用した環境が構築された。そのサーバー構成は、行政用と教育用の二系統に分かれている。
高崎市では、市庁舎内だけではなく市の施設となる支所や公民館から学校などの教育機関を含め、関連する施設間をスーパーワイドLANで結び、市内全域でイントラネットを構築している。高崎市の職員や組織で、メールアドレスを割り当てられている者には、イントラネットに結ばれているすべてのPCから、Active! mailを使って自分宛の電子メールを閲覧できる環境が整備されているのだ。
「セキュリティの関係から、Active! mail へのアクセスはイントラネット内からのみに制限しています。携帯電話や外部のプロバイダー経由によるアクセスは禁止しています。しかし、ほとんどの職員が移動先の施設にあるPCからActive! mail を利用できるので、利便性を損なうことはありません」
Active! mail によるWebメール環境は、個々のPC側でメール用ソフトを設定する必要がないので、情報政策課の限られた人数でも、6,000アカウント規模の運用が可能になった。また、安全性に加えWebアプリケーションという利点から、市役所内に設置したコンピュータ室内で集中的に管理されている。
迷惑メールフィルターの更なる活用が今後の目標
Active! mail の導入にあたっては、特別な教育や説明会などは開催せず、オンラインで参照できるマニュアルを用意しただけだったという。 それでも、ほとんどの職員が戸惑うことなくActive! mail を介して電子メールを使えるようになった。Active! mail の機能をあえて制限し、必要最低限の操作だけで電子メールの閲覧ができるようにしたことも、短期間で全職員への導入が成功した理由の1つだと考えられる。
「職員もイントラネットのグループウェアで庁内Webメールに慣れていたので、シンプルなActive! mailは使いやすかったようです。
また、導入当初はそれほど重要視していなかったActive! mailの迷惑メールフィルターが、とても役に立っています。スパムメールなどから情報漏えいにつながる危険性もあるので、迷惑メールを排除してくれる機能は、使ってみてから便利さを実感しています。あわせて、水際での迷惑メール対策も考えたいと思っています。」
行政としての安全対策に細心の注意を払い、その上で全職員の利便性に貢献したActive! mail によるWebメール環境は、平成18年1月の稼動から安定したサービスを継続し、高崎市職員の業務を支えている。